2013年09月09日

再会 プロローグ

僕のギターは62年のテレキャスターのコピーモデル。
カスタムテレキャスターと呼ばれてるもので、ボディーの材質はアルダーで、縁には白いバインディングが施されている。色はサンバースト、メイプルネックのローズ指板というモデルだ。
フロントピックアップはディマジオのPAFに変えてある。
何度かブリッジを交換しようと思ったけど、ブリッジにはシリアルNOが刻印されていて、この番号が俺の誕生日と同じだった。だから交換しなかったんだ。
このギターとは、かれこれ28年の付き合いになる。
「人生の半分以上か!いろいろなことがあったなあ」
ピックガードやボディーの傷にも思い出がある。
自然と顔がほころんでくる。
いろんなギターを手にしてきたけど、手元に残っているのはこのギターだけだ。
「もう、手放せないな。」
指板やボディーを磨いていくと汚れや埃でクロスが真っ黒になった。もう何年も押入れの中に放ったらかししてたからな。
「ごめんな。きれいにしたら、新しい弦を張るからさ。」
「弦を張るのも久し振りだなあ。どうやったっけ?」
自分でも可笑しくなる。音叉をポーンと叩く。この音も久し振りだなあ。チューニングしながら弦を馴染ませる。
「よし、大丈夫だ。ネックの反りも大丈夫そうだな。」
覚えているフレーズを弾いてみる。
「指が動かないし、上手く押さえられないな」
懐かしい感覚が甦ってくる。
「なあに、これ?」
いつの間にか優子が立っている。
「なにって、ギターさ」
「そんなことわかってる、どうしたの?」
笑いながら優子が聞いてきた。
「押入れの中から出してきたんだ。」
「ギターなんか持ってたんだ。」
「弾いてみて。」
僕は古いブルースのフレーズを弾いた。
「うーん、よくわからないけどあまり上手じゃないみたい。」
笑いながら優子は言った。
「何年も弾いてなかったからね。」
負け惜しみに聞こえるかもしれないけど本当のことだから。僕はこのギターのことを話した。
「大切なギターなのね。」
「私とギターとどっちが大事?」
優子はいたずらっぽい目で聞いてきた。
「もちろん…」
僕は言いかけて吹き出した。
「どうしたの?」ふくれっ面だ。
「ごめんごめん、思い出し笑い」
「真一って、幼稚園からの親友で...バンド一緒にやってたんだけど...」
僕は話しはじめた。

「智史さあ、前野って覚えてる?」
「ええっ、誰?」
「クリスマスコンサートで「スターダスト」ってバンドがあったじゃん」
「そこのベースやってた奴」
「うん、覚えてるよ」
「あいつ、ミュージックマンのベース持ってるじゃん。」
「ああ。」
「あいつ、命の次に大事なのは楽器なんだってさ。」
「ええ?」
「もう、可笑しくってさあ。命の次に大事なのは?」
僕と真一は同時に
「彼女だよな〜」
二人で目を合わせて大笑いだった。

あれから30年か。
今ごろみんなどうしてるだろう?





posted by BIRD at 11:45| 埼玉 ☔| Comment(1) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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